私には珍しい話題です。でもかなり耕介くんはツボらしく…同人誌観た途端に3人カットのラフを描いていた憶えが。でも初アップがこれになるとは思いませんでした(^^;。



「猛くん、好きなだけ居て下さいね」
 "くすり"と笑いながら、その場所から動かない猛に堤はそう声をかけてキッチンの方へ戻って行った。
 リビングに置かれたベビーベッドを覗き込んで指を赤ん坊に遊ばせるのに夢中になっていた猛は慌てて「すみません」と返事を返す。その声は結局届かなかった様だが、そのままにしていてた指を引かれた感触に、また猛はそちらへと視線を戻した。

 式部と堤の間に『緑』という子供が産まれ、今日はお祝いがてらといつものメンバーが式部邸に集まっている。全員で昼食も終え、ひといきついた所で猛はその輪から少し離れてまた子供を見ていたのだ。
 人さし指1本を手のひらいっぱいで握り返してくる柔らかくあたたかい体温に知らず優しい気持ちになってくる。そこに在るだけで気持ちを変えてくれる不思議な感覚を猛はそこに感じていた……。


「お前、そんなに子供好きだったか?」
 堤と入れ違いにこちらに来たのだろうか、突然の頭上からの声に猛は少なからず驚いて振り向く。
「びっくりさせんなよ、耕平」
 咄嗟に言葉を返すものの、いつもの様には勢いづいた様子はない。本気で怒ってるわけでは勿論ないことと、これは無意識に赤ん坊を気づかって…。
 そして赤ん坊の方へとまた身体の向きを戻してしまう。
「向こうでデザートでもどうかって、用意してくれてるぞ」
「うん、サンキュー」
 笑顔のままこちらは見ずにそう答える猛に苦笑しながらも、耕平はその頭にぽんと手を添えた。
 こんな時にも耕平の優しさは猛にあたたかく届けられる。そのあたたかさが、いつも心地よく…猛にとっては、とても嬉しかった。


「俺さ、」
「ん?」
 穏やかな声で話し出した猛に短いいらえで耕平が答えると、
「昔、すっごく弟が欲しかったんだ。勿論兄キのことも大好きだけど、小さい弟連れて歩きたかった頃があって……」
 優しい目を赤ん坊に向けながら猛は話している。
「何かこの子見てると、そんな時のこと思い出してた」
 つかませた指が"くん"とひかれ、また猛の笑みがこぼれるのを耕平は見ている。
「……なあ、猛」
「うん?」
「今から弟ってのは無理だろうけど、子供ってのはダメか?」
「へ?」
 唐突な耕平のそんな言葉に、さすがに今度は猛の手も止まって耕平を振り向いた。
「子供? 子供って、緑くん? ……あ」
 何のことかと思った猛だが、耕平の言わんとすることが解って瞬時に顔を赤くする。対する耕平は嬉し気な笑顔だ。
「なかなか悪くない話だと思うぞ」
「ば、馬鹿言ってんじゃ……」
 しどろもどろになりがら逃げるようにまた後を向いてしまった猛にそっと耕平は腕を回す。
「たける?」
 黙ってしまった猛にそっと声をかけると、しばらくまた間が空いてから何か小さく呟く声が聴こえた。
「ん?」
「大学とか仕事とか……俺の見通しついて落ち着いてからでもいいよ、な」


 ───決して嫌な訳じゃない。沢山の問題はまた山積みにされてしまうだろうけれど、それはそれだ。また今までの様に二人でひとつずつ考えていけばいいから。


 真っ赤になりながらのその猛の言葉もしっかり耳に入れ、耕平はまた幸せそうに微笑んだ。

 
 * * *


 はたして、約3年後。
 等々力家に長男『耕介』が誕生する・・・。

fin

B.G.M. 『二人なら』 by.TAIYOU NO TOU