ジリリリリリリリーーーーー
 枕元に置かれた目覚まし時計が、セットされた時間にクラシカルな音で鳴り出した。普通ならば飛び起きるであろう音量なのに、それを設定した人物にはあまり聞こえていないようである。
「・・・んー・・・っるさい・・」
 鳴り出してから30秒ほどたってから、ようやく布団の中からのびてきた腕が時計をがしっとつかんだ。しかし鳴りやんだ時計をそのまま放りだして腕は再び布団の中に戻っていく。
 静まりかえった部屋の中、ベッドの主が再び動き出す気配はない。
 そして20分後。
「猛っ!!!いいかげんに起きろっ!!」
「・・・うわぁっ!」
 ドアを蹴倒す勢いで入ってきた兄に布団をはがされ、その布団にしがみついていた猛は勢いよくベッドから落ちて床に転がった。
「雅っ!何しやがるっ!!」
 床にぶつけた頭を抱えながら、猛は目の前に仁王立ちになっている兄を睨みあげた。

「おーお、親切に起こしてやったおにーさまにそういう口をきくわけか」
「もう少しましな起こし方があるだろうが!」
「別に優しくおこしてやってもよかったけど、お前そんな時間あるのか?」
「え・・・・・うわあぁ!遅刻するっ!!」
 猛と一緒に床に転がった目覚まし時計は、いつも猛が家を出る時刻の5分前を示していた。
「ま、さっさと支度するんだな」
 すごい勢いで着替える弟の姿に苦笑しながら部屋を出ていこうとした雅が、ふと足を止めた。
「そうだ、昨日、お前に手紙が来てたのを渡すの忘れてた」
 雅はポケットから白い封筒を取り出すと、ほいっと机の上に置いた。
「ここに置いたぞ」
「うん、サンキュ・・・わぁっ、古文の教科書、どこだっっ!!」
「・・・お前、前の日に用意ぐらいしとけよな・・」
 答える余裕もない猛に肩をすくめて、雅は出ていった。
「よしっ!準備完了!・・・げっ!もうこんな時間!」
 5分オーバーしている時計を横目に、カバンとコートをひっつかむ。そのままばたばたと部屋を飛び出そうとした時、雅が置いていった封筒が目に入った。
「あ・・・そうだった」
 手に取った白い封筒にはワープロで書かれた自分の住所と名前。だが、どこにも差出人の名は書かれていなかった。
「何だろ・・・これ」
「おーい、猛!間に合うのか〜?」
 居間から聞こえてきた雅の声にはっと顔を上げる。
「間に合わせるっ!!」
 怒鳴ってからちらっと手の中の封筒を見た。
そして、
           

封筒をポケットに入れる。
封筒をカバンに入れる。
封筒をゴミ箱に捨てる。

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