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「別にいいぜ」
「やったー!んじゃハサミ」
「・・・どこから出したんだよ」
十条から渡されたハサミで、猛は封筒を開けて紙を取り出した。
4つに折られた紙を広げてみると、何かのチラシのようだった。
それ以外には何も入っていない。
「・・・チラシみたいだ」
「それだけ?」
「うん」
のぞき込んだ十条と一緒にじっとそのチラシを見つめた。
それは猛の家からそう遠くない教会でクリスマスに行われるミサのお知らせだった。
猛はその場所も存在も知っていたが中に入ったことはなく、わざわざこんなチラシを送ってくるような知り合いにも心当たりはなかった。
「あ・・見ろよ、下の方に何か書き加えてあるぜ」
十条が指で示した部分には、手書きで短い文が書き添えてあった。
『夜8時、教会前の公園で待ってる』
二人で顔を見合わせる。
「・・・何だ、これ・・?」
「やっぱ、これデートのお誘いじゃねーの?」
「・・こんな時間にかよ・・」
「確かに、待ち合わせにしては遅いよな。ミサも夕方7時からって書いてあるし。板橋、お前この字に心当たりないのか?」
「う〜〜〜ん・・・・あるようなないような・・」
何となく耕平の字に似ているような気もしたが、何せ小さくて短くしか書かれていない文字からはっきりとしたことは言えなかった。
「ま、あんまり気にすることもないんじゃないか?」
「そうだな」
・・あとでクリスマスのことと一緒に聞いてみよう・・・
猛はチラシを折ってポケットにつっこむと、拾い集めたプリントやノートをカバンにしまった。するとちょうどその時予鈴が鳴った。
「あ、そうだ。次の日本史、教室移動だ。あと五分しかないや」
急に十条が立ち上がる。
「えっ・・・俺、教科書忘れたっ!」
猛も慌てて立ち上がると、教科書を借りるべく廊下に飛び出していった。
「おい、板橋」
放課後。終礼と同時に教室を飛び出そうとした猛を、担任が呼び止めた。
「あ?はい」
無視するわけにもいかず、ドアの前で足を止める。
「生徒指導の山形先生が、一度顔見せろって言ってたぞ」
「げっ・・・」
「げっ・・って、お前なぁ。別に急いではいないみたいだったから呼び出しじゃないみたいだぞ。・・それとも何だ?何か疚しいことでもあるのか?」
「別にないけど・・」
にやっと笑った担任を思わず上目遣いにみてしまう。疚しいことがなくても学生で生徒指導室に呼ばれてうれしい奴はいないだろう。
「じゃあ、伝えたからな。行ってこいよ」
それだけ言うと、担任はさっさと教室から出ていってしまった。
生活指導室に来いと言われる覚えは全くない。
「去年ふざけてて自転車置き場の屋根を壊しちゃったのは・・・いくらなんでも時効だよなぁ。・・・あ〜〜、もう、何だよ一体・・・あれ?」
思わず悪態をついた猛のまわりにはすでに誰もいなかった。窓の外からは野球部がランニングしている重低音のかけ声と、テニス部の華やかなウォーミングアップの声が聞こえている。
「あ〜もう、遅くなっちまったじゃねーかっ!」
練習が始まる前に耕平を捕まえようと思ってたのに・・・。
ため息を一つつくと今度こそ、猛は教室を後にした。
「さて・・と」
教室のある校舎の階段を下りて渡り廊下に出た猛は、立ち止まると左右を見回した。
左にまっすぐ行くと陸上部が練習しているグランドに出る。右の校舎には大御所、山形先生の住処である生徒指導室がある。
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